エンダーの仕事

仕事は終わるもの

 

いや、終わらせなければ終わらない、

 

一見トートロジーのように思えるその状況、「終わらせられる者」でなければ終わらない仕事。

 

 

そう私はエンダー、全てをEND "終わらせ" 全てを———無に帰すER。 

"E"  "N"  "D"  "E"  "R"

それが私に与えられた、不名誉な呼び名。

 

 

 

 

モニタールームは拍手喝采で、泣き出す者までいる。まばらに明滅するその画面には、開かれたファイルサーバー5と、その中にある提出用フォルダ。

上から数えてきっちり35カット、psdデータの整列。

何かがおかしい、異変に気付く僕、喜びたいのはこちらの方なのに、何か異様な雰囲気だ。

戦闘を終え敏感になった本能がそう訴えかける。頭の中で、僕の頭の中だけに、敵が攻めてきた時に流れる、もう何度聞いたかわからないうざったい緊急アラートが鳴り始める。

「何をそんなに...喜んでいるんだ!」気付くと叫んでいた。

「僕はゲームをやっていただけじゃないか、原画試験というゲームを!試験に受かるか受からないか...そのゲームを!このゲームに勝てば僕らは晴れて原画の道に...」

「もうその必要はないのだよ、エンダー。」

見たこともない老人が、やけにはっきりとした口調で喋る。

「君は長いこと、実際のゲームをやってきたんだ、実際の——————現実にある、現実そのものをね。

「まさか————————————

僕は言葉を失う。老人が言ってることは理解不能だ。

「使うっていうのか?これを?僕の描いたレイアウトを?放送するっていうのか!?

ウソだ!だってこれはゲームだって、ゲームだって...言ったじゃないか!原画試験だって言ったじゃないか!」

「エンダー」

不思議と落ち着いているその声の主は、深い感動をたたえた調子で、言い含めるように喋り出す。」

「騙して悪かった。しかしこの、未成熟な承認欲求を抱えた君を、実戦で使うわけには行かなかったのだよ。実際の原画作業だと知ったら君は、描きたい絵と、描ける絵との間のギャップで吐くほど悩み、苦しみ、少し褒められただけで過剰に舞い上がり、けなされると必要以上に落ち込み、鼻から使い物にならなかっただろう。」

「だって、そんな——————!、じゃあ!僕らが殺した奴らは...!

「そう、バガー"侵略者"だ。君の心を侵略して、絵を描けなくしてしまう奴らだ。」

「僕は...彼等を殺したのか....!!!」

「そう、殺した。殺さざるを得なかった。人類が、なにより君たちが——————生き残るためにもね。」