アイデンティティーに対する根源的な不安が人を開拓の道へと向かわせる。おたくも学者も芸術家も音楽家も、元を正せばこういう部類の人間だということだ。
という考えが頭をよぎる。
オタクである僕は、アイデンティティーの不安を物語で埋めようとするし、その副作用で実生活とあまり関係のないオタク的知識が増えていき、ひょんなところでそのために役に立ったり、尊敬されたりもするが、現実と離反している距離の分だけちゃんとやれと非難されたり他人から理解されなかったりする。
酒に女に麻薬などは物語が無かった時代の最も根源的な現実から意識を遠ざけるための手段である。
他人に受け入れられている安心感という盤石の基盤の中で、きちんとまた自分も他者を受け入れ、お互いを尊重しあいながらも意思疎通を図る、そんなことが簡単にできればこんな退廃的享楽に耽る必要もない。